奈良公園が桜の頃と紅葉の頃、木の下で座っている鹿の鼻先に鹿せんべいを見せても、プイと横向くときがある。お腹いっぱいなんだろなと思う。観光シーズン最盛期の鹿のフンは、べっとり、ドタッと固まって落ちていることが多い。鹿せんべいをたくさん食べると水を飲みすぎて、お腹を壊すらしい。コロナ最盛期の頃はコロコロとしたよいフンが多かったと奈良の鹿愛護会の方が何かで話しておられると聞いた。 奈良公園の中で観光客を見かけることが、まるでなかった時期があった。鹿せんべいを売る小さなスタンドの前で、鹿が客引きをするそぶりが見えた、なんて話まで飛び出すぐらい、地元民の姿も少なかった。 コロナ慣れした最近は、海外からの観光客の方が多くなっているように見える。鹿にとっては、言葉の壁なんて、まるでないから、鹿せんべいがたくさん食べられて、嬉しいことに違いない。 知人の英語ボランティアガイドメンバーが、英語がなんとか通じるからと欧州系の人々をガイドした時に、奈良公園の鹿を見ながら「食べごろ」だとか、「うまそう」だとかの感想を述べていたそうだ。 (・・・・・オイオイ)
奈良公園の鹿はなぜ守られているのか?鹿は大昔から奈良にもいたが、神鹿となったのは、奈良に移された都を守るために、春日の御蓋山に常陸鹿島の武甕槌命(たけみかづちのみこと)をお迎えした時、白鹿に乗って来られてから。トドメに平安時代 承和4年春日山の狩猟、伐採を禁じた太政官符が出された。春日大社の御神域の動植物に手を出すな!と。 長い歴史の中で、鹿受難の時期もあるが、今は、天然記念物として守られている。
鹿が奈良公園で生活している事で、ほかの公園と違うことがある。目に見えて違うのは、鹿の糞。 糞をふんずけてきゃあと叫ぶ観光客に地元民として言ってみたいなあと思うことがある。 奈良公園で鹿のフンを踏みたくないなら、宙を飛ぶしかないよ!」 そしてその糞で生活する、糞虫がいる。綺麗に光る瑠璃色のルリセンチコガネのほか、たくさんの糞虫が奈良県にいてその大多数(おおよそ40種!と奈良鹿の愛護会のHPに書いてます。)が奈良公園にいて、日本の糞虫の三大聖地のひとつだそうだ。
★この糞虫を愛して「ならまち糞虫館」を作ったすごい方がいる。是非ならまち糞虫館で検索を
次に綺麗な芝生の原が続く春日野園地、浮雲園地、登大路園地と春日大社境内飛火野など、日々の芝刈り整備は鹿がしている。鹿の主食は鹿せんべいではない。主食のノシバや草、木の葉、木の芽、果実。食べないのは、シダ類、馬酔木、梛木、南京ハゼ。ゴルフをされる方はよくご存知だろう。芝の手入れは人手がいる。奈良公園の鹿はその人手分を賄っている。しかも、肥料つきで。
奈良公園では、木々の茂るところも非常に見通しが良いことに気づかれると思う。鹿が首を伸ばして、下草はもちろん 地上2メートルあたりまで、木の葉を食べる。ディアラインと言われている。面白いのは桜の頃。桜の花が好きなので、結構食べている。遠くからみると、おかっぱ頭のように下のラインが揃っている。で、別名おかっぱ桜。
きわめつけは、春日大社の一の鳥居を入って少しいったところ、春日若宮の御旅所の手前。 国立博物館から参道に抜ける道を入ったところに、2本のムクロジの古木がある。 御旅所よりの木は中が空洞になっていて、そこから竹が4、5本首を出している。周りは竹林ではない。エッと思う。子供達は素直に感激する。 種を明かせば、金網で仕切られた、国立博物館の地所側に竹が何本か生えているのが見える。 竹の地下茎が伸び、参道側に竹の子が顔を出しても、竹の子大好物の鹿が見逃すはずがない。 ごちそうさま!ですぐ食べられてしまう。で、ムクロジの空洞の中に頭を出した竹だけが生き延びる仕掛けだ。 鹿がいる風景。
さて、鹿せんべいだが、原材料は小麦粉と米ぬか。それ以外何も入っていない。製作工程も全自動。鹿せんべいに貼ってあるシールは和紙で、鹿が食べても安全な植物性のインクを使っている。 ただ、いつ作ったか、とか賞味期限が書いてない。チョツト味見はお勧めしないとのこと。
最近、鹿せんべいの自販機ができたそうだ。500円で箱入り。鹿せんべいの出店は夕方には引き上げる。奈良公園内のおみやげ屋さんでもおいているが、店じまいは早い。朝早くや、夕方に鹿に出会った時、自販機があればちょっと嬉しいかと。 ただし、今のところ、春日大社境内2箇所だけ、1台は奈良の鹿愛護会のある鹿園前、あと1台は春日大社国宝殿前のトイレ横の狭いコーナーにあるだけ。 鹿さん、気長に待とうね。
、