奈良は、ゆっくりと、時間をかけて歩いて回っていただくのが一番なんです。でも「時間がないんです・・」の方には近鉄奈良駅前から観光バスが出ています。 真冬と真夏は出来れば避けましょうね。少し寒い、少し暑いぐらいまでにおいで頂けたら、奈良を楽しんでいただけると思います。 ここでのご案内は、奈良と言っても奈良市内のご案内になります。
奈良公園も世界遺産の寺社も、街歩きの靴では、足が疲れます。 春日大社の参道は、完全砂利道です。東大寺境内の二月堂、三月堂、若草山あたりは石段の上り下りが多く、興福寺もほぼ地道です。飛火野あたりは芝生ですが、鹿の糞が散乱しています。 奈良町もかなりの急坂があったりします。平城宮跡は全部回ると4キロぐらいになります。 履き慣れたアウトドアシューズでおいでください。
さあ、参りましょうか。 今日は、春日大社から、手向山八幡宮、二月堂三月堂から正倉院外構、大仏殿、東大寺ミュージアム、南大門までのご案内です。
近鉄奈良駅前から、春日大社本殿前まで、ぐるっとバスが出ています。 青い車体の小さいバス。観光シーズンの全日と、オフシーズンの土日は15分ごとにバスが来ます。オフシーズンは30分毎です。 近鉄大和西大寺駅から春日大社本殿前をほぼ往復しています。 (JR奈良駅は行きません)
停車場所等詳しくは、 ならアクセスナビ http://www.nara-access-navi.com/ で確認を
奈良は歩いた方がいいと言いながら、早速バスに乗る?と思われますが、近鉄奈良駅辺から、春日大社本殿まで、ずっと上り勾配です。まず一番高い場所、春日大社から、ゆっくり下ります。バスに乗ると右左に鹿の姿がちらつきます。奈良公園にはおおよそ1200頭ほどの鹿が自活しています。 もちろん天然記念物。 鹿せんべいはおやつで、主食は芝や木の葉、木ノ実。手持ちのおやつなどを与えないでください。
春日大社本殿前で下車。国宝殿の横を通って二之鳥居から入ります。国宝殿入り口はガラス越しに重要文化財の石灯籠が見えます。右手階段下がトイレです。 鳥居手前の建物は車舎(くるまやどり)昔のガレージです。貴人の乗り物牛車が入るところ。檜皮葺(ひわだぶき)の重要文化財です。馬できた貴人もここで下馬。
ニノ鳥居をくぐり、巻物をくわえた鹿の手水所で手を清め、左手の祓戸(はらいど)社で穢れを祓います。社の前の灯籠は、祓戸型と言われています。
すぐに参道が分かれます。剣先の形で石が組まれた細い道は、昔は藤原氏専用の参拝道。 春日社は藤原氏の氏神様で、宮司も藤原氏の方しかなれません。一般人は広い参道から。道はこれから御本殿参拝まで、沢山の石灯籠が並びます。広い境内におおよそ2,000基、釣り灯籠が、1,000基奉納されています。御本殿に近くなる程、身分の高い人々の灯籠が多くなります。
参道が分かれる丁度角に、春日名物灯籠の一つ臥鹿灯籠(ねじかとうろう)があります。雄鹿と雌鹿が灯籠の台石をぐるっと囲んで臥せています。そのすぐ上の灯籠は、竿のところが春日大明神となっています。他の灯籠の竿は大半が、春日社です。2000基に近い石灯籠の中で、春日大明神の灯籠は、15ぐらいしかないそうです。なんと!1日で全部探したら大金持ちになれるそうです。その少し先に、越後屋本店と支店の灯籠が3基。あの三越の前身のお店です。
その先の石垣の上の建物が着到殿(ちゃくとうでん)。春日祭(国家の安泰と国民の繁栄を祈る祭り)の天皇勅使が、式次第を確認される「着到之儀」が行われます。檜皮葺の重要文化財。
★春日祭 春日社例大祭。 今は3月13日ですが、昔2月、11月上の申の日が式日だったので申祭とも。 三大勅祭(葵祭、石清水祭、春日祭)の一つ
着到殿入り口前は小さな広場になっています。左手石垣の前に春日大社の名物灯籠や、春日大明神等のいくつかの石灯籠が並んでいます。石垣の上は御本殿回廊。回廊石段の上は、榎本神社。
ここからは、奈良の昔話。榎本さんは、奈良の地の神様。ゆっくりお昼寝中、春日の神様に起こされて、地面三尺お借りしたいと頼まれたそうです。三尺?(おおよそ1m)ええよ?と返事をしましたが、これ、地下1mのこと。で、榎本さんの土地は、すっかり春日の神様に移ります。なので、春日の森の木の根は、地下に伸びず、地上にいっぱいはみ出しています。・・・・所で、代替え地をいただかれたものの、住みなれない榎本さん。春日さんに相談して、回廊の一角をいただかれたそうです。榎本さんにお参りするときは、格子をどんどんとたたいて、「榎本さん、来ましたで」と大きい声をかけて下さい、お耳が遠いそうです。御本殿にお参りする前に、まず榎本さんにお参りを。 榎本さんにお参りの後、右手の若宮様にまいります。
若宮様への道・御間道(おあいみち)も両側に石灯籠がびっしりと並びます。ただ、ここの灯籠は、火袋が桧製になっています。御間型燈籠(おあいがたとうろう)です。
若宮様(天押雲根命・あめのおしくもねのみこと)御社殿は昨年御造替がすみ、瑞々しく、美しい。春日大社御本殿と同じに作られた「春日造り」。御本殿は、中門、御廊に遮られて拝観できないので、若宮社殿をしっかりとご覧ください。拝殿背後に北側より御廊、次の1間を細殿(ほそどの)、南側6間を神楽殿、御祭時は、御巫による御神楽奉納があります。
拝殿を通り過ぎると良縁、夫婦円満の夫婦大黒社。ご夫婦の大黒様はめづらしい。大黒社殿の中に、テレビや映画で見る有名人の奉納おしゃもじが飾られています。水に浮かべる恋占いも!
大黒社から続いて、人が一生を送る間に遭遇する色々な難所を守護する十五のお社が続きます。お時間があれば是非お参り下さい。
御間道を戻り御本殿へ。御本殿には平城遷都時、常陸から奈良の都、御蓋山にお迎えした武甕槌命(たけみかづちのみこと)を、称徳天皇勅命で、御蓋山中腹に社殿創建、御遷座(神護景雲2年)奈良の都の平安を祈りました。 ●武甕槌命(たけみかづちのみこと)茨城県鹿島神宮 ●経津主命(ふつぬしのみこと)千葉県香取神宮 ●天児屋命(あめのこやねのみこと)大阪府枚岡神社 ●比売神の四柱をお祀りしています。 春日大社の日々のご祭祀は、1年で、2千2百を超えるそうです。
本殿南門右左にぎっしりと石灯籠が並んでいます。徳川家、大奥局、大名家の灯籠もあります。右上に灯籠に覆いかぶさるように枝垂れ桜が毎年美しい花を咲かせます。南門前、柵中の石は昔、神額が落雷で砕け落ち、開いた穴に額を埋納、穴にかぶせた石の一片との事。入って直ぐ右回廊が坂になって上がっている。回廊、社殿などは通常は、地面を平らにしてから建てられるが、ここは聖なる御蓋山。できるだけ山の形を崩さず回廊、社殿が造られています。
正面は拝殿ではなく、幣殿(へいでん)。本殿参拝はここからです。見上げて天井がある右側半分は幣殿。天皇陛下からのお供物(御幣物)を仮置く場所。天井がない方は舞殿(ぶでん)。神楽舞の場所。幣殿の向こう白砂の場所は林檎の庭。右手に小さな林檎の木が植わっています。平安時代、高倉天皇がシルクロードを渡ってきた林檎の木を奉納されました。今は、東北の女子高生が奉納した和林檎の木になっています。左手に見あげる大杉。杉の後ろに岩本社。鎌倉時代に描かれた「春日権現験記」(かすがごんげんげんき)にまだ若木の大杉と岩本社が描かれています。時の流れにため息が出ます。参拝のあと、石段を降りずに左側の直会殿(なおらいでん)側によって、屋根を見て下さい。大杉の側から真柏が横に伸びて直会殿の屋根を突き抜けています。木を切らずに屋根を切っています。平安時代初期に春日山の狩猟伐木を禁ずる太政官符が出されて、以来木は大切に守られています。
御本殿内参拝希望の方は、幣殿右手の特別参拝の受付へ。参拝料500円
★お守りや、御朱印は南門を入ったすぐ左の授与所でいただきます。奈良の工芸品一刀彫りのかわいい鹿や、土の白い子鹿がおみくじを咥えて並んでいます。ちょっとしたお土産に!
石段を降りて右前に近衛家献木の砂ずりの藤(ノダフジの変種)藤の季節は、長い花房のこの藤に気を取られがちですが、振り返って高い木の上を見ると、いたるところに山藤が咲いています。回廊内側に金色の釣り灯籠、直会殿側には錆色の釣灯籠。これが1000基ほど。
藤棚前の門が慶賀門。藤原氏専用の門。剣先道を登りこの門より入ります。ここだけ天井が張られて位の高い門です。次の門が清浄門。興福寺の僧侶が通ります。興福寺は、藤原氏の氏寺。明治以前は、神も仏もともに祀っています。一番上が内侍門、ご神前で御奉仕する女性が入る門です。
慶賀門の下に竃殿(へついどの)があります。例祭春日祭の熟饌(じゅくせん)・煮炊きしたお供えを調理するところ。竃(かまど)が設けられています。内侍門の下には、酒殿(さかどの)。やはり春日祭のお供え神酒を醸造するところ。内部に大甕(おおがめ)があり、現在も濁酒を醸造してお供えをします。内侍門の石段を降りて振り返ると、三門のある回廊だけ瓦屋根になっています。竃殿も、酒殿も火を使うので、檜皮葺の屋根では、火がうつりやすいから、ここだけ瓦屋根なのです。
内侍門を下りたところの建物、桂昌殿。五代将軍徳川綱吉の母桂昌院が奉納した建物入り口の上に葵の紋が彫られています。酒殿の先に歌碑。阿倍仲麻呂の「天の原 ふりさけ見れば春日なる 御蓋の山に いでし月かも」。留学生として唐に渡った阿倍仲麻呂が、長年唐の朝廷に仕え、ようやく帰国を許された送別の宴の歌。日本へ向かった4船のうち、仲麻呂の乗った遣唐船は途中難破、再び唐に戻り、七十三歳で長安に没しました。同じ遣唐船団の別の船に乗った唐招提寺の鑑真和上は日本にたどり着かれました。歌碑から右に折れて水谷神社へ。
曲がってすぐの灯籠に春日大明神がはっきりと見える石灯籠があります。右手に大きな藤棚が作られ、藤棚の後ろのほうにも藤づるがうねっています。誰がおいているのか、石の上にちいさな陶器の12支が。石段を降りて水谷神社(みずやじんじゃ)へ。素盞鳴命(すさのおのみこと)・大巳貴命(おおなむちのみこと)・奇稲田姫(くしなだひめ)の三柱を祀ります。すぐそばを清流水谷川が流れています。
水谷神社が春日大社の境界です。水谷神社の瑞垣を割ってイブキが生えていますが、その空洞から杉が生えています。水谷さんの宿り木として知られています。その横の風情のある茶店が水谷茶屋。桜の頃と紅葉の頃は抜群の被写体です。道を挟んで向かい側に公共トイレがあります。道一つ向こうは若草山への石段が続きます。若草山の裾を通って手向山八幡宮に向かいます。